【書評】狐笛のかなた

狐笛のかなた (新潮文庫)

狐笛のかなた (新潮文庫)

読んでいて思ったのが、重厚な文体である、という事。
細かな仕草や風景描写が、想像以上の情報量となって、情景を浮かび上がらせる。
それが非常に心地よい。

幼い頃に出会った主人公の少女と、命を助けられた小狐(霊狐)。
そこに、出自は不明だが、厳重な屋敷に幽閉された生活をおくる少年。
その出会いが、後々の話の根幹となる。
わずかばかりの邂逅が、先を見据える糧となる。

人と、人あらざるものとの話は多々あろうが、
こういったある意味潔い結末としているものも珍しいのではないだろうか。
わずかばかりの終章に、唸ってしまった。

守人シリーズとはまた違った、作者の世界に浸れる一冊です。