【書評】マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕

圧倒的だ。
3巻では、数々の”勝負”が行われる。
その一つ一つが、ものすごい吸引力を持ってして、
畳み掛けるように、まさに、のめり込ませてくる。

前巻から続いたカジノでの決着。
長く続いたブラックジャックの対決は、
途中で主人公、ひいては読者の絶望を煽るだけ煽りつつ、
一筋の光明と称されるわずかな可能性に、
その身をねじ込ませる。
勝負が決した瞬間はある意味必然ではあったのだが、
その息も絶え絶えに辿り着いた先に、心情を揺さぶられるのだ。

最終決戦となるボイルドとの撃ち合いは、
想像すればする程、一手毎の重みが、
激しい音を伴って構築されるようで。
こういったドンパチでありがちな、
運で勝てた、だの、
叫んだら最後押し切れた、とか、
友情、愛情の力でどうこう、といった、
ありがちな王手では決してない。
自らの力で実現可能な、
リアルな仕上がりになっている。

作者の描く精神性のにおける一言には、
抽象的な表現が多く見られる。
そこに対し自らがどう捉えるかによって、
本質的には単一の物語に大きな変化が現れる。

なんとまあ、楽しませてくれます。