【書評】マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕
マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 文庫
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圧倒的だ。
3巻では、数々の”勝負”が行われる。
その一つ一つが、ものすごい吸引力を持ってして、
畳み掛けるように、まさに、のめり込ませてくる。
前巻から続いたカジノでの決着。
長く続いたブラックジャックの対決は、
途中で主人公、ひいては読者の絶望を煽るだけ煽りつつ、
一筋の光明と称されるわずかな可能性に、
その身をねじ込ませる。
勝負が決した瞬間はある意味必然ではあったのだが、
その息も絶え絶えに辿り着いた先に、心情を揺さぶられるのだ。
最終決戦となるボイルドとの撃ち合いは、
想像すればする程、一手毎の重みが、
激しい音を伴って構築されるようで。
こういったドンパチでありがちな、
運で勝てた、だの、
叫んだら最後押し切れた、とか、
友情、愛情の力でどうこう、といった、
ありがちな王手では決してない。
自らの力で実現可能な、
リアルな仕上がりになっている。
作者の描く精神性のにおける一言には、
抽象的な表現が多く見られる。
そこに対し自らがどう捉えるかによって、
本質的には単一の物語に大きな変化が現れる。
なんとまあ、楽しませてくれます。