【レビュー】バッファロー'66

いや、正直な所、最後の結末に文句はない。
ただ、そこに至るまでの過程が、理解し難い部分がある事も確か。

主人公の生い立ちを追う部分を、
途中で誘拐する少女を狂言回し的扱いとして説明させる構成。
また、彼女の存在は主目的を果たそうとする流れにおいて、
ともすれば弱気になりがちな感情を鼓舞させる一助とも。

伝わってくるのは、主人公の人生に対するやるせなさ。
自暴自棄とも言い換えられるその行動に、
正当性はない。ただのエゴだ。
愛情をかけられていない、といった描写も多々。
だからこその、自宅に戻る直前や、
ラストの自らの未来の想像での、
両親の無情観が際立つ。

縋りたくなったのだろう、愛情に。
心穏やかに眠れたのではないだろうか。

バッファロー'66 [DVD]

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【レビュー】ミッション: 8ミニッツ

別に、だまされるという事もない。
ただ、ラストのオチは読めても、やるかやらないか、それだけの違いだ。
よくありがちな、登場人物を殺した上でハッピーエンドにする為に、
ご都合主義的に復活させるかのような。

主人公は列車の中で記憶がないまま目覚める。
自らが置かれた状況を把握しようとしている最中、
爆発に巻き込まれ、再度目覚めた先は…。

パラレルワールドという概念、
または時間軸の相違に対する理解がないと、
基本的な進行が解らなくなるかもしれない。
今ある現実すらも、既に別世界で起きていたかもしれない、
そう考えながら鑑賞する事をお勧めする。
(とあるシーンにはその状況を示唆する演出もあるので)

細かく伏線が貼られていたりもするので、
時間があるのであれば2度見てみると面白いかと。

現実とは、なにか。

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ミッション:8ミニッツ ブルーレイ+DVDセット

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【レビュー】リベリオン

なんともニヤニヤしてしまうのである。
良くも悪くも。
B級的魅力と、残念な部分とが上手い具合に均衡を”取れてしまった”。

争いのない世界を作るため、
薬物投与と、芸術の放棄により人間の感情が抑制された社会。
感情がある、と判断されれば、捜査官により抹殺される。
主人公は捜査官の中でもトップクラスの実力者であったが、
ある事件をきっかけに体制に歯向かって行く。

特筆すべきはアクションに関する設定の数々。
中でも「ガン=カタ」と呼ばれる銃を用いた武術については、
苦笑と賞賛の両方を持って評価されるのではないか。
また、連続して撃ち続けた重火器の銃口が、
赤熱するシーンはリアリティに溢れる。
そういった部分は、面白いのだ。
歌舞伎の面取りや、日本文化に影響された良い所も多々あるが、
全体的に矛盾点や不備が多すぎる事で質的にはどうか、と。

ある意味、トガッたSFアクションを観たいのであれば、
まあ、オススメしてみようではないか。

リベリオン -反逆者- [DVD]

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【レビュー】猿の惑星: 創世記

今までのシリーズを知っているかどうかで印象が変わる気もするが。
本作だけでも、まあ、うーん、といった所か。
トリビュートといった方がしっくりくるかもしれない。

アルツハイマー治療の新薬実験で驚異的な知能向上を見せた猿の子供が主役。
シーザーと名付けられた彼は、成長するにつれ、
自らの存在意義に悩みだす。
決して人の世に相容れる事のないシーザーは、
ある出来事をきっかけに捕らえられてしまい…。

シーザーを含む猿は役者にCG処理を施しているものだが、
これがもう見分けがつかないレベル。
後半に至っては若干擬人化の具合が鼻につくものの、
怒濤の勢いにあっという間にエンディングを迎える。

人間においても言える事だが、
寄る辺のない環境において、窮地に陥った際にどのような選択を取れるかが、
個としての意味を決める。
そういった視点で見た場合、シーザーは充分に人と同等だ。

また、以降シリーズ物として続いていくのではないだろうか。

【レビュー】タクシードライバー

劇中に流れる曲の雰囲気とは逆に、
内容としては退廃的な印象を常に受け続ける。
主人公の、日々におけるやるせなさ、いらだち、
焦りといった今も昔も変わらぬ、
あの感情群にどうしようもなく振り回される様は、
鑑賞側に共感させてくるのではないだろうか。

タクシードライバーとなった主人公が、
恋をするが上手くいかない序盤から、
凶行に走りつつも、たまたま知った娼婦(少女)を救う流れにシフトする。
結果的に、罪に問われなかったものの、
一歩間違えれば犯罪者となっていた。

大統領候補の暗殺を計画し、
自らを鍛えるシーンもどこか真実味がない。
それだけに、超人などでは決してない一般人としての彼に、
苦笑しつつも納得してしまう。
本人がまじめであればある程、伝わるものはあるのだから。
そこに狂気が孕んでいたとしても。

幕引きの仕方は、ちょっと唸ってしまう。
格好良かった。

【レビュー】シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム

脚本が良くなっている、というより、
そもそもモリアーティ教授との対決を全面に押し出した所が高評価の要因では。
若干中だるみ感も否めないが、全体的に面白い。

天才同士の争い、追いつ追われつの激しい攻防。
シャーロックホームズ、といった媒体を知らずとも、
話のキレに引き込まれるのではないか。

前作でも登場したアイリーンの登場があまりないのが残念ではあるが、
今作におけるホームズの行動の原動力になる辺り、仕方のない事ではある。
冷静、といった彼に対して、
感情で動く部分が見れる事は意外性を持って良く映る。

シャドウゲーム、と日本語訳では表現されていた、
格闘シーンにおけるスローモーション下の手数の読み合いや、
集中砲火からの逃げるシーンは見所。
このシリーズの代表的表現になるだろう。

個人的には前作を見直してからの鑑賞をオススメする。

【レビュー】ダンス・ウィズ・ウルブズ

開拓、かくありき。
序盤では未踏の地に踏み込む様子が描かれる。
後半では一変、土地を追われる側に。

南北戦争で英雄となった主人公は、
自らの意思でフロンティアの最前線へ赴く。
そこは見渡す限りの草原、荒野であり、
インディアンが暮らす土地であった。
言葉が通じない種族同士の交流、
そして選んだ道とは。

全編を通して空と平原、
雄大な風景に圧倒される。
馬上での疾走感も目を見張る。
これは是非見てみてほしい。

個としての存在の意義は。
生き方という概念において、
何を取捨選択するのか。

物語のラスト、”風になびく髪”の台詞が胸に刺さる。
なんとも。

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